転勤支援で差がつく！人事が知っておきたい不動産会社との上手な付き合い方

1. なぜ転勤支援で不動産会社選びが重要なのか

社員の入社・転勤がスムーズに進まない原因とは？

企業の人事担当者にとって、社員の入社や転勤は日常的な業務の一部です。しかし、住まい探しがスムーズにいかず、結果として入社や転勤が遅れるケースも少なくありません。特に新天地での生活を前提とした転勤者にとって、住居は最も不安な要素のひとつです。

現場では「急な辞令で時間がない」「物件が見つからず入居日が調整できない」「家族帯同で条件が複雑」など、さまざまな問題が発生します。これらの背景には、不動産会社との連携不足や、法人対応に慣れていない業者に任せてしまったことが原因の場合が多くあります。

結果として、内定辞退やモチベーション低下に繋がるリスクをはらんでおり、人事部門としても軽視できない課題となっています。

不動産会社の対応力で社員満足度は大きく変わる

社員の住まい探しにおける不動産会社の対応は、企業の“受け入れ体制”そのものに直結します。物件提案の質、レスポンスの速さ、内見調整の柔軟さなど、きめ細やかな対応ができるパートナーを選ぶことで、社員のストレスを大きく軽減できます。

とくに近年は「働き方の多様化」や「家族構成の変化」により、物件選びのニーズも複雑化。たとえば、ペット可物件、子どもが通学しやすい学区、高齢の親との同居を想定した間取りなど、画一的な提案では対応しきれません。

社員一人ひとりの背景に寄り添い、必要な条件を汲み取った提案ができる不動産会社であれば、「この会社に転勤してよかった」と感じてもらえる確率も高まります。

2. 人事が信頼できる不動産会社を選ぶ5つの視点

法人契約や社宅代行の対応実績

不動産会社によっては、個人契約には慣れていても「法人契約」や「社宅代行業務」に不慣れなケースがあります。法人契約では、請求書払い・法人名義の契約・契約書フォーマットの確認など、通常の契約とは異なる対応が求められるため、経験の浅い業者だと手続きの不備や遅延が発生しがちです。

信頼できる会社は、企業とのやり取りに慣れており、社内稟議や経理処理の流れを理解したうえでスムーズに進めてくれます。実績数や取引企業の例を提示してもらえるかも確認しておきましょう。

エリアごとの賃貸相場や物件情報の精度

転勤先が複数ある企業では、不動産会社のカバーエリアや物件情報の「鮮度」も重要です。特に地方都市や郊外では、地場密着の情報網が物件探しの明暗を分けることもあります。

全国に支店を持つ大手不動産会社や、提携ネットワークが広い業者であれば、どのエリアでも一定の情報量と交渉力が見込めます。また、現地の市況を把握しており、「〇月は引越し需要が集中するため賃料が上がる」といったアドバイスも受けられる場合があります。

内見～契約までのスピード対応

社員のスケジュールに合わせて内見日を素早く調整できるかどうかも、信頼性の高い不動産会社かどうかを見極めるポイントです。繁忙期でも複数物件を一度に内見できるよう配慮してくれたり、Web内見やオンライン契約に対応していたりする業者は、転勤者にとって非常に助かる存在です。

また、物件の申し込みから契約までの工程が効率化されている業者は、トラブル発生時の対応も迅速です。忙しい人事部門にとっては、進捗状況の“見える化”や報告の丁寧さも、重要な判断基準となるでしょう。

社員への説明力やヒアリング力

社員本人が直接やり取りする場面では、「不動産担当者の人柄や対応力」がそのまま会社の印象に直結します。たとえば、初めての一人暮らしの若手社員や、家族を連れての転勤で不安を抱える中堅社員に対して、どれだけ丁寧に説明し、安心させられるか。

聞き出す力に長けた担当者であれば、「通勤時間」「スーパーの距離」「子どもの学区」など、細かいニーズを的確に引き出し、的確な提案をしてくれます。

転勤者の「家族事情」への柔軟な理解

近年は「単身赴任」ではなく「帯同転勤」が増え、家族構成やライフスタイルに合わせた住まいのサポートが求められるようになりました。ペット可物件、バリアフリー、二世帯向けなど、多様な条件に柔軟に対応できるかが問われます。

また、子育て世帯であれば学区や通学経路、共働き世帯であれば保育園やスーパーの近さまで含めた提案ができる不動産会社は、社員の満足度向上に大きく貢献します。

3. 関係を築くコツ！人事と不動産会社が連携するために

要望は「抽象的」より「具体的」に伝える

不動産会社と良好な関係を築くためには、「物件紹介をお願いします」だけではなく、より詳細な要望を伝えることが大切です。たとえば「通勤時間30分以内」や「2LDK以上・ペット可」「保育園が近い」など、転勤者の生活スタイルに基づいた条件を明確に共有することで、ミスマッチのない物件提案が可能になります。

また、「今回の転勤者は単身・若手社員」「前回は家族帯同で4件内見したが満足度が高かった」など、過去の成功例や失敗例を共有することも、業者側の理解を深めるポイントです。

不動産会社との連絡役を明確にする

複数の担当者が不動産会社に都度連絡をとると、情報が錯綜し、対応が遅れる原因になります。社内で「不動産会社との窓口役」を決めておくことで、伝達ミスやタイムロスを防ぎ、担当者のストレス軽減にもつながります。

企業によっては人事部門と総務部門で対応が分かれることもあるため、連絡ルールやフローを事前に定めておくことが重要です。メール・電話・チャットなどの手段も統一することで、情報のやり取りが格段にスムーズになります。

内見結果や入居後のフィードバックも共有する

「物件案内がスムーズだった」「説明が丁寧だった」「契約書の記載ミスがあった」など、実際に対応を受けた社員からの感想やフィードバックを不動産会社と共有することで、より良い関係構築ができます。

不動産会社としても、自社のサービス品質向上のためにこうした情報は貴重ですし、何より「次回の対応」にも活かされていきます。信頼関係は、単発のやり取りではなく、継続的な改善の積み重ねで生まれるものです。

4. 不動産会社との付き合い方でよくある失敗と回避策

紹介任せにしすぎてミスマッチが発生

転勤先の物件探しを不動産会社に「丸投げ」してしまい、社員の希望とズレた提案がされるケースは少なくありません。特に「急いでいるので何でもいいです」と伝えてしまうと、賃料重視や空室状況優先で選ばれてしまい、結果として社員が不満を抱くことに。

こうしたミスマッチを防ぐためには、「希望条件の優先順位」を明示することが重要です。たとえば「駅近は必須」「築年数より間取り重視」「できればバス・トイレ別」など、希望の度合いを具体的に共有しておくことで、精度の高いマッチングが可能になります。

業者との相性が悪く、現場が混乱

「この業者は以前から使っているから…」と惰性で依頼し続けていると、転勤先の現場でトラブルが起きたときに対応が後手に回ることがあります。たとえば、担当者が頻繁に変わる、レスポンスが遅い、内見調整が雑など、現場社員が振り回される状況になれば、企業への信頼も損なわれかねません。

対策としては、「定期的な業者見直し」を行うこと。年1回程度、対応品質や社員の満足度を振り返り、必要に応じて他社との比較検討を行うことで、質の高いパートナー選定につながります。

対応範囲や費用を事前に確認しなかったケース

「契約時に仲介手数料とは別に手数料が発生した」「内見同行は無料だと思っていたが費用が請求された」など、後から追加費用が発覚するケースもあります。これは、事前に業務範囲や費用構造を確認していなかったことが原因です。

不動産会社とのやり取りを始める段階で、「仲介手数料の扱い」「契約代行の有無」「法人契約の必要書類」などを明文化し、双方で共通認識を持つようにしましょう。可能であれば、簡単な業務委託書を作成するのも有効です。